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番外編 約束、しただろ?
パトカーや救急車のサイレンが近づき周囲は騒音の渦となった。壱東さんは冷静そのもの。全く動じることなく運転を続けた。
「姐さんが無事で良かった」
車を下りると鞠家さんが心配そうな顔で駆け寄ってくれた。
「俺の心配はしないのか?」
「するだけ無駄だ。ハチと青空の迷コンビもそのうち帰ってくる」
「覃は?」
「バイクで赤い車を追跡し、逃げ込んだパチンコ店の駐車場で運転手の男と対峙した。互いに銃を構え、一歩も引かなかった。滅多に見ることが出来ない覃の男らしい姿を譲治に見せてやりたかった。間違いなく惚れ直す」
「俺はてっきり譲治がバイクを運転していると思ったぞ。もしかして宋か?」
「フルフェイスのヘルメットを被っていたから顔までは分からないがおそらく間違いない」
「そうか」
「オヤジ、いつまで姐さんの手を握っているつもりですか?」
「そりゃあもちろん家に帰るまでだ。無事に送り届けると約束したんだ」
彼が嬉しそうに繋いだ手をぶんぶんと大きく振った。
「相変わらずラブラブで羨ましい」
「そういう鞠家だって紗智とラブラブだろう」
「オヤジと姐さんには負ける」
壱東さんが車から荷物を下ろしてくれた。
「鞠家さん、みんなにお土産があるの」
「みんなが喜ぶ。ありがとう」
「あとで渡してあげて」
鞠家さんに紙袋を渡した。
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