2231 / 3299
番外編青いダストボックス
叫び声にドキッとして振り返ると横倒しになったダストボックスから人の頭の部分がちらっと見えた。
「亜優、マーを頼んだぞ」
ちょうどエレベーターが開いて、名残惜しそうに手がスッと離れて、亜優さんと一緒に中に押し込まれた。
「遥琉さん、待っ……」
無情にも扉が閉まってしまった。そのまま九階に向かうと、紗智さんと那和さんが出迎えてくれた。
「マーは戻っちゃ駄目だって、バーバが」
「大丈夫。息はあるみたい」
二人に引き留められ、後ろ髪を引かれる思いで子どもたちと橘さんが待つ我が家へと帰った。
「あの、さっきの人、もしかして九条さん……な訳ないか。こんなところにいる訳ないもの。ここからうんと離れた荒海山にいるはずだもの」
「高速を使えば車で二時間半も掛かりません。九条さんをどうしても死なせたくない人物がいるようですね。兄弟分の上総さんならなんとかしてくれる。そう思ったのかも知れませんね」
けたたましく鳴り響く救急車とパトカーのサイレンの音が近付いてきた。
九条さんが病院から連れ出した朔久さんのことが心配だった。
「叔父として、彼はけじめを付けたんです。心を鬼にして、死をもって罪を償わせようとしたのかも知れませんね。ついさっき速報が流れました。南稜小屋から直線で約100メートルの場所で朔久さんらしき若い男性が発見されたそうです。生死は不明です」
橘さんの言葉に言葉を失った。
ともだちにシェアしよう!