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番外編 親の心、子知らず

「はっちゃん、そらさん、ただいまー」 「普通はおかえりなんだけど、まぁ、いっか。ハルちゃんただいま」 「おちゃにしますか?それともコーヒーにしますか?」 「じゃあコーヒーでお願いします」 「ちょっとまっててくださいね」 蜂谷さんがキョロキョロとあたりを見回した。 「もしかして惣一郎を探しているのか?」 「菱沼金融の前に山のような胡瓜とキャベツと玉ねぎが置かれてあったから、オヤジかなって思って」 「可愛い一人息子に野菜を送ろうとしても、処分に困るから送ってくるなって言われるし、甘いものを送ろうとしても甘いものは嫌いだ。送ってくるなって言われるし、惣一郎と和江がかわいそうだ」 「いいかハチ、親ってもんは子どもが離れて暮らしているといろいろと心配が絶えないものなんだぞ」 「茨木の言う通りだ。子どもが幾つになっても心配は尽きない。自分たちの心配よりハチの心配ばかりしている」 「お互い素直じゃねぇからな。ハチ、惣一郎は度会の家だ。五時に待ち合わせをしているから、待っていたら会えるぞ。逃げてばかりいないでたまには親子水入らず、腹を割って話しをするのもいいんじゃねか?」 ふたりの言葉を蜂谷さんは黙って聞いていた。

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