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番外編 親の心子知らず
「ハチはいいぞ」
「何がだ?」
「親がいるってことだ。俺の記憶のなかに親はいない。知ってるだろう。俺がどういう環境で育ったか」
その言葉に蜂谷さんがはっとした。
「秦さんが俺の父親になる。そう言ってくれたとき嬉しかった。ずっと一人だったから。ハチ、恥ずかしがらずにいけ。生きているうちが花だ。当たって砕けろだ」
「なんか意味が違くないか?」
「オヤジと上総さんは昔は喧嘩ばかりで仲が悪かったと聞いた。でも生きているからこそ仲直りすることが出来た。でも九条と朔久はどうだ?喧嘩別れしたまま、もう二度と会えないんだぞ。こんな悲しいことはないだろう」
「だよな。ありがとう青空。親父に会ってくるよ」
青空さんに背中を押された蜂谷さん。足取りも軽く惣一郎さんに会いに行った。
「相楽の息のかかった鼠がいる。ハチがそう言っていた。俺もそう思う。赤い車の運転手が逃走する寸前まで誰かと話していた」
「誰かって……もしかして穣治さん?」
「覃の可能性もあるし、宋という男の可能性もある。疑い出したらキリがない。確たる証拠もない。姐さんが出掛けることは急に決まった。にも関わらず用意周到だった。たまたま偶然姐さんを見掛けたのかも知れない。でもおかしいと思うのが普通だ」
青空さんの言う通りだ。
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