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番外編 覃さんに物申す
「覃に物申すと言えるのは姐さんしかいない。飼い主の恋女房なら言うことを素直に聞く」
「え?ちょっと待って。僕?」
「あと誰がいるんだ。覃の電話番号だ」
青空さんにメモ紙を渡された。
「ヤツは都合の悪いことになると急に中国語で話す。亜優でも張り付けておけ。陽葵を抱っこする。逃げられる前に電話をしろ。心配するな落とさない。泣いたら一太に渡す」
両手を差し出され、陽葵を青空さんの腕の中にそっと置いた。
「前に抱っこしたより重くなった。オヤジじゃなく姐さん似で良かった。陽葵、兄ちゃんたちのところに移動だ。泣いてもいいから暴れるなよ。落としたら尻をぺんぺんされる」
青空さんが子どもたちのところに陽葵を連れていってくれた。
携帯とメモ紙を交互に眺めることかれこれ五分。なかなか決心がつかなくて。思わずため息をつくと、「マー、ダイジョウブ?」亜優さんに心配顔をされてしまった。
「遥琉さんならきっとこう言うよね。聞きたいことがあれば遠慮することはない。分かるまで聞けって。モヤモヤするなら、白黒はっきりつけるまでとことん聞けって。疑心暗鬼こそ一番の敵だって。亜優さん、覃さんと話しが終わるまでお願いだから隣にいて」
亜優さんはポカーンとしていた。
無理もない言葉が通じないんだもの。
亜優さんはしばらく考えたのち、隣じゃなくて、膝の上にごろんと横になった。嬉しそうにニコニコと微笑む亜優さん。その顔を見たらさすがに違うとは言えなかった。
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