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番外編 宋さん
緊張してがちがちになっていたら、亜優さんが胸に手を置いた。
「亜優さんありがとう」
目を閉じて深呼吸をしてから、番号を打ち間違えていないか確認して覃さんに電話を掛けた。
ー誰かと思ったらやはりきみかー
覃さんは僕が電話を掛けてくるのをあらかじめ予想していたみたいだった。
ー浩宇 と話しがしたいんだろう?ー
「覃さん、心の準備がまだ……」
ー準備が出来たから電話を掛けて寄越した訳じゃないのか?相変わらずきみは面白いなー
電話の向こうで覃さんがくすっと笑った。
ー浩宇はボスの愛人 と……ー
ー余計なことは言わんでいいー
てっきり中国語で話し掛けられると思いどきどきしたけど、聞こえてきたのは流暢な日本語だった。
「はじめまして宋 さん。未知です」
ー宋 浩宇 だー
日本語お上手なんですね
ー上手もなにも俺もボスと同じ日本人だー
「え?そうなんですか?」
驚きのあまり声が裏返った。
ーそう驚くことでもあるまい。沐辰 の言う通り面白い子だなー
宋さんにもクスクスと笑われた。
ーボスからきみを守るように命令された。ボスの命令は絶対だ。破ることは死を意味する。それにまだ最高のパートナーに巡り会っていないしー
「宋さんあの……」
そのときなぜか若林さんの名前が頭に浮かんだ。
「会ってもらいたい人がいるんです。宋さんにすごくお似合いだと思うんです」
ー分かった。きみがそこまで言うならー
もしかしたら宋さんなら若林さんを受け入れてくれるんじゃないか。そんな気がした。
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