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番外編 若林さん

若林さんのポケットから何かが落ちてソファーの下に吸い込まれていったような気がした。 「青空さん」 タンクトップの裾を掴み、ツンツンと引っ張った。実際に身長を測ったことがないから分からないけど、三十センチくらいは身長差があるかもしれない。だからこうして青空さんが前に立つと完全に前が見えない。そびえ立つ壁のようだ。 「姐さん?」 何回か引っ張ったらようやく気付いてくれた。 「若林さんにソファーの下に何かが落ちたよって教えてあげて欲しいの」 「教えてやってもいいが交換条件がある」 「え?交換条件?」 予想もしていなかった返事にどう答えようか戸惑っていたら、 「姐さんが可愛いから。つい意地悪をしたくなった。ごめん」 愉しげにくくくと笑い出した。 「青空、姐さんをからかって遊ぶな」 「悪いが断る。姐さんとハチと亜優。一緒にいて楽しい。姐さんの笑った顔、困った顔……見てて飽きない。俺の楽しみを奪う気か?これだけは譲れない」 「は?」 蜂谷さんに注意されても青空さんは動じなかった。さすがだ。

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