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番外編 若林さん

「寝ている男の写真を大至急探して欲しい」 両腕を胸の前で組むと目を閉じて項垂れた。それを見た亜優さんはすっと右手を挙げた。 「よくそれだけで通じたな」 「ずっと一緒にいるんだ。言葉は通じなくても、コミュニケーションは取れる。亜優、頼んだぞ」 亜優さんは大きく頷くと、若林さんからスマホを借りエイチケイという男を探しはじめた。 「青空、いつまで未知をお姫様抱っこしているつもりだ。いい加減下ろせ」 「安全が確認できないうちは駄目だ。姐さんは小さい。踏まれたら大変だ。それに若林が狼になるかもしれない」 「若林は狼にはならない。所持品検査済みだ。たく、お前の頑固さは誰に似たんだ」 ほとほと困り果てて、ため息をついた。 青空さんに下ろしてって何度も頼んでいるんだけど、その度にまだそのときではないと却下された。 「青空さん、子供たちが心配だから一旦家に帰りたいんだけど……駄目……だよね?」 「了解した。ハチ、戻るぞ」 素直に下ろしてくれると思ったけどそう問屋は卸さなかった。 「え?ちょっと待って青空さん」 そのままスタスタと歩き出したから驚いてバランスを崩しそうになり、慌てて首根っこにしがみついた。 「ハチ、鞠家とヤスだ。交代だ」 「言われなくても分かってる」 蜂谷さんがスマホを耳にあてた。 「バーバ」 亜優さんが慌てて彼にスマホの画面を見せた。

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