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番外編 若林さん

踵を返した蜂谷さん。彼と一緒にスマホの画面を覗き込んだ。 「誉で間違いないよな?」 「あぁ、間違いない」 「亜優、お手柄だ。よくやった」 彼に褒められ、頭をぽんぽんと撫でてもらい、亜優さんは照れながらも嬉しそうにはにかんだ。 「若林、もっと詳しく話しを聞かせてくれ」 「協力したいのは山々なんですが、これからオークポリマーに行かないと……打合せをすっぽかしたら副社長に怒られます」 「そうだったな。引き留めたりして悪かった。それじゃあ仕事が終わってからでいい」 「残業とかで八時を回るかも知れません」 「そうか。じゃあ、旨い夕飯を準備しておく」 「プロ並みに旨いと評判の橘さんの手料理ですか?」 「あぁ、もちろんそうだ」 「彼から橘さんは弁護士の他に調理師に食育インストラクターの資格を持っていると聞いていたので。やったー!一度でいいから橘さんの料理を食べてみたかったんです」 「そうか、それは良かったな」 「はい。生きてて良かったです」 興奮して子どものようにはしゃぐ若林さん。 「なかなか面白い男だ」 彼が目を細めてにっこりと微笑んだ。

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