2252 / 3261
番外編 若林さん
踵を返した蜂谷さん。彼と一緒にスマホの画面を覗き込んだ。
「誉で間違いないよな?」
「あぁ、間違いない」
「亜優、お手柄だ。よくやった」
彼に褒められ、頭をぽんぽんと撫でてもらい、亜優さんは照れながらも嬉しそうにはにかんだ。
「若林、もっと詳しく話しを聞かせてくれ」
「協力したいのは山々なんですが、これからオークポリマーに行かないと……打合せをすっぽかしたら副社長に怒られます」
「そうだったな。引き留めたりして悪かった。それじゃあ仕事が終わってからでいい」
「残業とかで八時を回るかも知れません」
「そうか。じゃあ、旨い夕飯を準備しておく」
「プロ並みに旨いと評判の橘さんの手料理ですか?」
「あぁ、もちろんそうだ」
「彼から橘さんは弁護士の他に調理師に食育インストラクターの資格を持っていると聞いていたので。やったー!一度でいいから橘さんの料理を食べてみたかったんです」
「そうか、それは良かったな」
「はい。生きてて良かったです」
興奮して子どものようにはしゃぐ若林さん。
「なかなか面白い男だ」
彼が目を細めてにっこりと微笑んだ。
ともだちにシェアしよう!