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番外編 若林さん

「はじめまして橘さん」 「実物を見てガッカリしたでしょう」 「そんなことないです」 若林さんがぶんぶんと顔を振った。 「彼が恐妻らしいけど見た目はそうでもない。美人でもないしどこにでもいる顔だ。どこがいいんだか。十年早く産まれていたら力ずくでモノにし、お高く止まったその鼻をへし折ってやったのに。そんな話しをしていたから」 「そうですか」 橘さんは笑って受け流していたけど、その顔はかなり強張っていた。 テーブルの上に橘さんが腕によりをかけて丹精こめて作ってくれた料理がずらりと並んだ。 「ご相伴に預かりすみません」 和真さんが軽く頭を下げた。一人では心もとないと若林さんに連れてこられたみたいだった。 「私の料理より、新婚の奥様の手料理のほうが美味しいと思いますが」 「いえ、そんなことないです。妻の料理も、橘さんの料理も両方美味しいです。遠慮なくいただきます」 和真さんと若林さんが両手を合わせた。 「誉のヤロウ、次に会ったら一発ぶん殴ってやる。人の女房をなんだと思ってんだ。柚原がいたら間違いなく怒っていたな。子どもたちのぽちゃぽちゃタイムで良かったな」 「遥琉、誉さんの言う通りです。私は美人でもないし、可愛くもないです。怒っても仕方がないですよ。未知さん家に戻りますよ。そろそろ子どもたちがお風呂から上がってきます」 橘さんがお盆を手に立ち上がった。

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