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番外編 若林さん
若林さんがぷぷっと吹き出した。
「ぽちゃぽちゃって卯月さんの言い方が可愛くて。気を悪くさせたらすみません」
「顔が怖いのは元々だ。慣れてもらうしかない。組事務所では組長としてふんずりかえって威張ってられるが、家に帰れば九人の子どもたちの父親であり、カミさんの尻に敷かれたただのおっさんだ。気にしてないよ」
「子どもが九人って………」
人数を聞いて若林さんが唖然としてた。
「話せば長くなるが、上は七歳から下は生後一ヶ月の赤ん坊まで実子が五人の、息子として面倒をみているのが四人いる。亜優も俺と未知の、それこそ目に入れても痛くないくらい可愛い息子だ」
「そうなんですね」
若林さんが額の汗を手で拭った。
「暑いか?悪いが温度をもう少し下げてくれ」
鞠家さんに声を掛けようとした彼を、
「いえ、大丈夫です」
若林さんが慌てて止めた。
若林さんがマッチグアプリでエイチアイこと誉さんと出会ったのは半年前のことだ。年上にしか興味がない。貴方に一目惚れした。貴方は俺の運命の人だと情熱的に口説かれ、三日後には実際に会ってそのままホテルに直行し、交際がスタートしたと話してくれた。つい最近まで誉さんは若林さんのアパートで一緒に暮らしていた。というよりは潜伏していた。若林さんからアパートの鍵を借り、住所を教えてもらい、根岸さんと伊澤さんが急いで向かった。
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