ー夜勤だがもしかしたら休憩中かも知れない。ダメ元で掛けてみたらどうだ？ー ｢覃さん、忙しいのにありがとうございます」 電話を切ってすぐに宋さんに電話を掛けた。 ー番号を見て未知さんだとすぐ分かった。覃からもメールが来ていた。未知さんを無視したらそれこそボスと覃に半殺しにされる。用件は？ー ｢話せば長くなるんですけど、若林さんを元カレから守って欲しいんです。元カレっていうのが、まゆこさんやシェドさんやダオレンさんの知り合いみたいで、何て言ったらいいんだろう。えっと……ごめんなさい。分かりやすく説明するってなかなか難しいですね」 ーそんなことはない。今の説明でだいたい分かった。それよりも未知さん、若林の写真ありがとう。俺の理想を絵で描いたような男だ。友だちからはじめればいいんだろう？元カレのことをそう簡単には忘れられるものではないからな。彼が振り向いてくれるまで待つことにしたー ｢宋さん、待つのはいいけど一年なんてあっという間に過ぎていきます。気付いたら十年が過ぎてたってことになる前に、若林さんのことをちゃんと好きになって下さい。お願いします」 ーしかとお願いされます。ボスの愛人《アイレン》の頼みを無下に断ったら、ボスに殺される。ボスも卯月さんも覃も千ちゃんもきみのことになると顔つきが変わる。大事にされているのがよく分かる。だから、俺もきみを大事にすることに決めたー