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番外編 たまには夫婦喧嘩をするのも悪くない だってマーに甘えられるもの
足音を消し、抜き足差し足忍び足で、僕に気付かれないように細心の注意を払いながら彼が近付いてきた。
目を閉じていたウーさんがぱっと目を開けると、しーと唇の前に人差し指を立てた。
「未知に構ってもらおうと思って速攻で寝かし付けたのに、やはり先を越されていたか」
がっくりと肩を落とした。
「ごめんなさい遥琉さん」
「なんで謝るんだ。子どもに焼きもちを妬いてもしょうがないだろう。ウー、頼むからそんなに睨まないでくれ。マーを横取りする気はさらさらない。みんなマーのことになると人が変わるからな。おっかねぇ」
すごすごと部屋を出ていこうとした彼。「あ、そうだ」何かを思い出したみたいですぐに戻ってきた。
「だからそう睨むなって。未知、根岸からチカを迎えに仙台に向かうと連絡があったぞ。娘に頼まれたんだってそりゃあ嬉しそうだった」
「遥琉さんに真っ先に言うべきだったんだけど……言うのが遅くなってごめんなさい」
「そんなことない。チカだって一人でいるよりここにいたほうが少しは気が紛れるだろう」
「ありがとう遥琉さん」
「おぅ」
柔和な表情でにっこりと微笑みと、優しく髪をぽんぽんと撫でてくれた。
そのあと、じーーっと穴があくほど見つめられ、カーッと首から上が熱くなった。
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