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番外編度会さんがひた隠しにしてきたこと

「ねぇ紗智、何て言ったの?」 「えっと、それは……」 紗智さんが言葉を濁した。 「飲み物をひっくり返したら大変だから、代わりに持つね」 「ありがとうマー」 紗智さんからお盆を受け取った。 「覃、物事には順序というものがあるんだよ」 「日本語分かりません」 「ふざけないで」 「いたって真面目だ」 「どこが真面目なの」 紗智さんが覃さんに詰め寄った。 「覃さん、最初に言いましたよね?私の可愛いい娘たちと孫たちをいじめないで欲しいと。もし約束を破ったら金輪際譲治さんと会わせない。許さないとも言いましたよね?」 穏やかな口調だったけど、紫さんの目は笑ってはいなかった。 「ここにはここのしきたりというものがあるんですよ。従ってもらわないと困ります」 「すみません」 覃さんが頭を垂れた。 「あなた、どこに行くんですか?」 そろりそろりと足音を忍ばせ、廊下に出ようとした度会さんがギクッとし立ち止まった。

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