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番外編 度会さんがひた隠しにしてきたこと

「この際ですから白黒きっちりつけましょう」 「未知やチカがいるんだ。あとにしてくれ」 「貴方は昔から都合が悪くなるとそうやってすぐ逃げてばかりいましたよね?」 「いつ逃げたんだ。俺は逃げていないぞ」 「あら、そうですか?貴方と結婚して四十九年。私の目は節穴じゃありませんよ」 紫さんが不機嫌そうに度会さんをじっと見つめた。 「分かった。座ればいいんだろう」 観念し、座布団の上に胡座をかいてすわった。 「余計な波風を立てたくなくて貴方には黙っていましたが、千里から教団の前の教祖の写真を見せられたとき、私は絶句しました。覃の言う通り若い頃の貴方に瓜二つなんですもの。新婚のとき、これも捜査の一環だと夜の蝶の綺麗なお姉さま方とずいぶんとまぁ楽しく遊んでいた時期がありましたよね?毎日のように朝帰りして、仮眠を取ると張り込みがあるからとまた出掛ける。私がなにも知らないとでも?女性と会っていたんでしょう?私みたいな子供が産めない女なんて価値がありませんよね?ガミガミうるさいだけで」 「それは違う」 度会さんが慌てて首を横に振った。 「何が違うんですか?やましいことがないならちゃんと分かるように説明してもらえませんか?覃がさっき言った言葉の意味は、チカがシェドのお姉ちゃんということです。そうですよね、紗智?」 紫さんに聞かれた紗智さん。力なく項垂れるとこくりと頷いた。

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