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番外編おしどり夫婦の夫婦喧嘩

昇龍会一おしどり夫婦として有名な度会さんと紫さん。福島に住むようになってから一度も夫婦喧嘩をしているところを見たことがない。その二人が口論をはじめたものだから、みな固唾を飲んで見守ることしか出来なかった。 「度会さんも元刑事だったとはね。未知は知ってた?」 「いえ、僕もはじめて知りました」 首を横に振った。 「チカちゃん、あの…・・」 シェドのお姉ちゃんといきなり言われ動揺しているかと思ったけど、チカちゃんは怖いくらい落ち着いていた。 「チカちゃん、もしかしてそのこと……」 「捜査関係者の間で一時期その噂が流れていたってダーリンから聞いたことがあるの。男だった頃のアタシとシェドの顔がとても似てるって」 「そうなんですか?一度も見たことがないから」 「見なくていいわよ。アタシにとっては黒歴史だもの。過去はぜ~んぶ封印よ」 チカちゃんがそんなにまじまじ見ないで。 くまさんだらけだから、もぅやだ~~。そう言いながら顔を両手で覆った。 「兄貴、オヤジに至急連絡してください」 譲治さんが鍋山さんに頼んでいたら、 「オレが連絡してくる」 末席に控えていた若い衆がスマホを耳にあてながらすっと立ち上がった。

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