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番外編 彼と譲治さん
「命がけで奈梛ちゃんを連れ出したあやみさんの為にも奈梛ちゃんをまゆこさんのところに帰す訳にはいきませんから。弁護団を結成し、まゆこさんの代理人と真っ向から争うことにしました」
「ネグレクトと死んでも構わないという殺意を持って奈梛ちゃんを放置し殺そうとしたんだもの。親権停止は二年、親権喪失は期間を設けていないから、奈梛ちゃんの将来のためにも親権喪失の判断を家庭裁判所がしてくれればいいんだけど……」
「そうですね」
あやみさんが最後に残したメッセージとメールは、鳥飼さんのスマホに大切に保存されてある。一週間くらい前、菱沼金融、菱沼商事、菱沼コンサルティングの留守番電話にもあやみさんの最後のメッセージが録音されてあることが判明した。藁をも掴む思いで死ぬ間際に、菱沼という名前が付く会社に片っ端から電話を掛けんだろうって彼が話していた。
「鳥飼さん、卯月さん、どうか妹をお願いします。まゆこに渡さないで。私みたく殺されるから、だっけ?あやみが自分の命を犠牲にしてまでも奈梛を守ろうとしたんだもの。今度はアタシたちが一致団結して奈梛を守らなきゃ。あやみと花が浮かばれない」
チカちゃんが奈梛ちゃんを見つめた。最近ようやく泣いたり、笑ったり、駄々を捏ねたりと、子どもらしい表情を見せるようになった。
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