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番外編 彼と譲治さん

「楮山組にいたころ、七海さんみたくセクハラ行為を受けていたのかも知れませんね」 「楮山も九鬼以上にかなり変わった趣味の持ち主だったって聞いてるわ。譲治は弟を守るため、なにをされても、なにを言われても、へらへら笑って大人しく言うことを聞いていたんじゃないかな。嫌だと言わないからストレスの捌け口にされていたのかもね」 「笑顔の裏側に久弥さんと同じように心に受けた深い傷を隠しているのかも知れませんね」 「だとしたら覃も森崎と同じで大変じゃん」 「乗り越えないといけない壁が高いほうが俄然燃える。恋は一筋縄ではいかないものだ。二人はまだ若い。時間はいくらでもある。本音を言い合い、たまには喧嘩して、一生続く新しい関係を築けばいい」 蜂谷さんが皿にこんもりと盛られたカレーを二つテーブルの上に並べた。 「ハチ、たまにはいいこと言うじゃん。見直した」 チカちゃんとしては軽く背中を叩いたつもりだったけど、 「だから、痛んだってば。頼むから手加減してくれ」 彼みたく蜂谷さんも悶絶するのかと思ったら、青空さんに痛い痛いの飛んでけーと背中をすーっと撫でられ、 「止めてくれ、くすぐったいんだ」 くねくねと体をよじらせた。

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