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番外編 遥琉さん、わざとでしょう‼
「未知、チカみたく俺も食べさせて欲しいな」
彼が隣に座ると、わずかな隙間に頭を潜り込ませてきた。
「ちょっと待ってて。陽葵を寝せるから」
「アイスがとけるからなるべく早く頼む」
「うん、分かった」
彼が服に鼻を擦り付け、くんくんと匂いを嗅いできた。
陽葵を落とすわけにはいかないから、くすぐったいのを我慢し、手で頭を支えながら、そっと静かに下ろした。
良かった。今日はぐすらないでねんねしてくれた。
服をツンツンと引っ張れ、ぎくっとして下を向くと、ほとんどまばたきをせず、はじけるような笑顔でじっと見つめる彼と目があった。
「この甘いミルクの匂い。俺の一番好きな匂いだ。不思議と落ち着くんだ。今だけだから堪能しておかないとな」
「で、でもね遥琉さん、とける前にアイスを急いで食べないと。もったいないお化けが出るよ」
封を切ると、彼が口を大きく開けた。
なんでバニラじゃなくてチョコにしたのかな?
その理由はすぐに分かった。
「遥琉さんわざとでしょう?」
「わざとじゃないよ」
悪戯っぽい笑みを浮かべながら、鼻先についたチョコアイスを舐めてと言わんばかりに指差した。
「もぅ、しょうがないんだから」
恥ずかしくて仕方がなかったけど、上半身を屈め、顔を彼の顔に近付けた。目と鼻の距離にドキドキして心音が一気に跳ね上がった。意識しないようにすればするほど逆に意識してしまい躊躇していると、襟首のあたりをそっと撫でられた。
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