「覃、知らない？」 翌朝、子どもたちに聞き歩く譲治さんの姿があった。 「きみたちも知らないよね？」 心望や太惺に聞いたのち、陽葵にも「見てない？」と聞いた。しまいには裸足のまま庭に下り、「覃！」「覃！」と大きな声で何度も呼んだけど、返事はなかった。 「かくれんぼをする約束だったのに……」 「そうか」 「指切りもしたのに……」 「急に仕事が入ったんじゃないか？」 「聞いてないよ。分かんない」 急な予定変更にパニックになる譲治さん。彼や鍋山さんが二人がかりで宥めていた。 すっかり忘れていたけど、覃さんの本職はバウンティハンターだ。法の裁きから逃げている逃亡者を捕まえるのが仕事だ。 ニュース番組で脱税の疑いで逮捕された大物政治家の公設秘書が、出頭に応じず行方不明になったと報じていた。 「やるときはやる。覃はそういう男………」 テレビを見ていたチカちゃん。公設秘書の顔写真を見てしばらくの間固まっていた。 「どうしたのチカちゃん？」 「どっかで会ってるのよね。名刺をもらった記憶があるのよ。どこで会ったんだっけ？」 チカちゃんが首を傾げ、しばらくの間考え込んでいた。