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番外編 覃、知らない?

「あ、そうだ。思い出した!」 チカちゃんが本当に驚いたという声を出した。 「おぃチカ、やっと落ち着きを取り戻したってのに大きな声を出すな。譲治がびっくりしてまたパニックを起こすだろう。あぁ、もう。言わんこっちゃない」 「ハルくんごめんね。だって思い出したんだもの。許して~~」 申し訳なさそうに両手を合わせた。 「で何を思い出したんだんだ?」 「教団の日本支部の支部長と一緒にホテルにいた男よ。聖人君子のごとく、しれっとした表情で記者会見を行っていたの」 「日本支部?そんなものがあるなんて初めて聞いたぞ」 「アタシもよ。ダーリンも驚いてたわ」 チカちゃんの話しでは、教団ぐるみで違法薬物の密売に関わったとして家宅捜査を受けたのち教団関係者が記者会見を行ったみたいだった。記者からの質問に、一貫して《《元信者》》が勝手にやったこと、私どもは何も知りません。分かりませんを繰り返した。 「元信者って言ってたでしょう。ダーリンが調べたら家宅捜査の前日に元信者になったみたいよ。ほとぼりが冷めたころには教団に戻ってるわよ。それにね、教団に関してはいろいろと黒い噂が飛び交ってるのよ」 「黒い噂?」 「宗教法人の認可を取るのってすっごく難しいのよ。だからまゆこは寺の住職の息子で四十歳過ぎても独り身の男性を婚活サイトで探し出して結婚したでしょう。教団の宗教法人の認可はなぜかすんなりと下りたのよ」 「なるほどな」 彼が納得し、二度三度と大きく頷いていた。

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