2353 / 4015
番外編来るもの、たまには拒んでいいか?
「来る者は拒まずだが、たまには拒んでいいか?」
「やはりあなたは器の小さい、薄情な男だったんですね。助けを求める譲治さんを見捨てるんですね」
「一言もそんなことを言ってないだろう」
「さぁ、どうだか」
割烹着姿で橘さんが台所に立っていた。
「突っ立ってないで中に入ったら?」
チカちゃんに背中をそっと押された。
「えっと……あ、そうだ。譲治さん、お腹空いたって……」
非常に気まずい空気が流れていた。
「お粥持っていきますね」
お盆を持ち上げるようとしたら、
「譲治さんは猫舌です。冷ましておいたので熱くはないとは思いますが、念のため、食べさせる前に確認してください」
「分かりました」
「未知、譲治なんか言ってたか?」
「うん。遥琉さんと盃を交わしたい、菱沼組に入りたいって」
「そうか」
「ねぇ、遥琉さん。でも、やっぱりいい」
「気になるだろう?怒らないから言ってみ」
「うん。盃を交わすことはいつでも出来るでしょう?だから一旦保留にして、譲治さんが受けた心の傷を癒すことを最優先させて欲しいなって思ったんだ。久弥さんもいて大変だと思うけど、僕も手伝えることはなんでも手伝うから」
しばらくの間彼は押し黙り、神妙な面持ちで考え込んでいた。
ともだちにシェアしよう!

