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番外編 譲治さんの想い
これだけ賑やかなのに、譲治さんは布団の上に座り空をじっと見つめていた。
何度か声を掛けようとした彼だけど、こういうときの譲治さんはまわりの声が一切耳に入らない。そっとしておいてやろう。彼が部屋から出ていこうとしたら、
「待ってください」
譲治さんが体の向きを変えた。
「どうした?」
「どうか鍋山さんを怒らないでください。俺を庇ってくれているんです」
「なんの話しだ?」
「兄貴に……会ったんです……」
譲治さんがガタガタと震えだした。
「楮山組の連中にか?」
譲治さんが目をぎゅっと閉じて小さく頷いた。
「お前には失望した。散々目に掛けて可愛がってやったのに。俺の顔に泥を塗った。鍋山さんに嫌なことを言った。鍋山さんが止めなかったら殴っていた。兄貴の思惑通りになっていた」
「譲治、それはいつの話しだ」
「3日前かな、もっと前かも。そのときのことを見ていた人がいて、鍋山さんそれでみんなに疑われて」
「そうか、そんなことがあったのか」
「鍋山さん、嫌なことを言われたのに、それなのに俺を庇ってくれた。なのに俺……」
譲治さんが体の震えを抑えようと自分の肩をぎゅっと抱いた。
「まずは落ち着こうか?」
彼が譲治さんの隣に腰を下ろした。
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