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番外編 譲治さんの想い

「それなのに俺、逃げてばかりいる。鍋山さんに迷惑ばかり掛けている」 「そんなことねぇよ」 彼が笑顔で譲治さんの顔を覗き込むとぽんぽんと頭を撫でた。 「鍋山さんや卯月さんの役に立ちたい。亜優さんを貸してください」 「亜優をか?」 「はい」 「別にそれは構わないが……」 ちらっと亜優さんを見る彼。 亜優さんは手を交差させて大きくバッテンマークを作ると、ぶんぶんと首を横に振った。 「覃に焼きもちを妬かれたくないから嫌だと言ってる」 「卯月さん、言葉が分かるんですか?すごいです」 あてずっぼうだと正直に言おうとしたら、 「今ごろバーバのすごさに気付くなんて遅いよ」 「そうそう」 紗智さんと那和さんが大きく二回も頷いたものだからすっかり信じてしまった。 その後、場所を広間に移し、紗智さんに手伝ってもらいながらパソコンを操作し真剣な表情でなにかを探しはじめた。 「夢華のアカウントはオヤジに命令され削除した。でも新しい女が現れて、夢華の名前を名乗りまたお茶会をはじめた。兄貴たちは悪いことだと知っているのに、楽に儲かるからと手を貸している」 譲治さんが新しい夢華さんのアカウントを見付け出し、スクロールして画面を移動させると、動画を再生させた。そこに写っていたのは……。

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