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番外編ヤスさんの生い立ち
「ヤスの親はさっき言った新興宗教の熱心な信者だった。ヤスが中坊の時、忽然と姿をくらました。家賃が払えず住んでいたアパートを追い出され路上生活をしていたとき、たまたま上京していた弓削に拾われて、そのままヤクザになったんだ。弓削は昔の自分にヤスの姿を重ねたのかも知れないな」
ヤスさんにそんな過去があったとは。驚いて声も出なかった。
「弓削は昔からいろんなモノを拾ってくることで有名だった」
「それを言うならハルくんもでしょう。アタシと橘兄妹と光希を拾ってくれて、助けてくれたでしょう。ハルくんと弓削は似た者同士なのよ。だから、二人とも未知のことが大好きになったのよ」
「度会さんは弓削に菱沼組を継がせようとした。でも、その前に弓削は未知に出会い、一瞬で胸をぶち抜かれた。未知は弓削にとって初恋の相手なんだ。ちなみにヤスの初恋の相手は四季だ。お、噂をすればなんとやらだな」
♪♪ゆき ゆき ゆき ゆきうさぎ
~~みんなのスーパー ゆきうさぎ~~♪♪
一度聞いたら忘れられない軽快な音楽を流しながら移動スーパー、ゆきうさぎ丸がやってきた。しばらくすると、
「♪♪ゆき ゆき ゆき ゆきうさぎ~~今日の特売は~~♪♪」
歌を口ずさみながらヤスさんが上機嫌で姿を現した。
「姐さん、イキのいい魚が手に入ったから持ってきたぞ」
ヤスさんがまるごと一匹高く掲げた。
「もしかしてお呼びじゃなかったか?」
「いや、そんなことない。ちょうどヤスに聞きたいことがあったから電話をする手間が省けた」
「なら良かった。姐さん、あとは煮るなり焼くなり好きにしてください」
ヤスさんにぽんと魚を手渡された。
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