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番外編ヤスさんの生い立ち

ゆきうさぎ丸をヤクザの会長宅の前にど~~んと停めたものだから初めは遠巻きに見ていたご近所さんも街中では見掛けない移動スーパーに興味津々、一人また一人と集まってきた。値段はちょっとお高めだけど、新鮮な魚と肉、産地直送の朝採り野菜、ジャンボサイズの手作りの揚げ物を買い求める人であっという間に大行列になってしまったみたいで、 「兄貴、大変です!油を売っている場合じゃあないっすよ」 若い衆が慌てて呼びに来た。 「ヤス、未知が固まっているぞ」 「姐さんも魚のぬるぬる感が苦手ですか?」 「いえ、それは大丈夫なんですが、口を開けてて、すごく睨まれているような気がして……」 「あぁ~~なるほど。姐さんは魚にも優しいんですね。見てて飽きないです」 ヤスさんが声を上げて笑い出した。 「ヤス、店が落ち着いたら戻ってこい。折り入って話しがある」 「分かりました。譲治、一緒に来るか?」 ヤスさんに手招きされ、譲治さんがチラッと彼を見上げた。 「社会勉強にもなる。行ってこい。ただし、ヤスに迷惑を掛けるなよ。それと危ないから飛び出しは禁止。いいな」 譲治さんは何度も頷き、ヤスさんのあとを小走りで追いかけていった。

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