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番外編 鍋山さんの思い
「譲治は一度集中すると自分の世界に入ってしまうんですよ。そうなるとまわりの音は一切耳に入らない。何を言っても無駄です。あと二時間はこっから動きません」
「鍋山、もう一度考え直さないか?全部お前が背負わなくても世話好きの人間は大勢いる」
「ヤスさん、その言葉だけありがたく受け取っておきます。いま、譲治を突き放すわけにはいかないんです。上田にいいように利用され傷付くのが目に見えている」
鍋山さんが譲治さんの頭に帽子を被せてあげた。
「鍋山……」
「ヤスさん、オヤジと会長を待たせるのは失礼にあたります。早く行ってください」
「そこまで言うなら……分かったよ。鍋山、これだけは覚えておけ。お前は一人じゃないぞ。俺やマリやハチや柚原がいる。困ったときや、手に負えないときはいつでも言ってくれ。遠慮はなしだ」
「ありがとうございます」
鍋山さんが深々と頭を下げた。後ろ髪を引かれる思いでヤスさんは広間へ急いで向かった。
「あら~~やだ~~ヤス、カッコ良すぎ~~惚れ惚れしちゃう」
「チカちゃん、国井さんに焼きもちを妬かれますよ」
チカちゃんは両手をパチンと叩き、甲高い声ではしゃいでいた。
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