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番外編 ヤスさんの生い立ち

「オヤジ、いま何時ですか?」 「もう少しで昼だ」 「ヤベ!すっかり忘れていた」 ヤスさんが慌てて立ち上がった。 「なんだ四季とデートか?」 「分かっているならいちいち聞かないで下さい」 四季さんの名前が出たとたんヤスさんの表情がぱっと明るくなった。軽く、跳ねるような足取りで廊下に出ると紫さんにばったり出くわした。 「お昼くらい食べていったらいいのに」 「四季が首を長くして俺のことを待っているので、すみません」 「それは残念ね。今度、四季さんと和真さんを呼んで、みんなでご飯を食べない?」 「和真は大丈夫なんですが、四季が人見知りをするんですよ。それに……」 言葉を濁すヤスさん。 「車椅子だからまわりの人に気を遣わせてしまうって心配して遠慮しているんでしょう?」 「はい。その通りです。大姐さんには隠し事が出来ないです」 照れ笑いしながら頭を掻いた。 「四季さんに伝えて。ヤスの娘なら、私にとって可愛い孫も同然。遠慮しなくていいから、いつでもいらっしゃいって」 「四季に必ず伝えます。大姐さん、ありがとうございます」 腰を九の字に曲げ頭を下げると、鼻唄を口ずさみながらルンルン気分で出掛けていった。

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