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番外編 案ずるな、俺が命に代えても守る

「神棚に祀ってあった榊が榊立ごと突然下に落ちてきたと紫さんが話していました。一太くんたちが無事に帰ってくるといいんですが……」 「女と子どもに銃を向けるなどあってはならない。ましてや傷付けるなど言語道断よ」 チカちゃんが語気を強めた。 度会さんは腕を前で組み玄関の前で仁王立ちしていた。険しい表情で「何人たりとも通すな!」と舎弟たちに指示を飛ばしていた。 「ねぇ、橘。連中が仕掛けた罠にまんまと引っ掛かった。ハルくんに限って、そんなことないよね?」 「本部に出頭するようにと千里に命じられた相楽さんは、千里のところではなく、石山さんのところに真っ直ぐ向かい、そのまま消息を絶ちました。相楽さんは、菱沼ビルディングと渡会さんの自宅の警備体制と防犯カメラの位置、それに警備が手薄になる時間帯がないか、それも調べていました。罠に引っ掛かったフリをして、チカさんを襲った犯人を誘き寄せる作戦みたいですよ。あのまま十階にいて、もし犯人に急襲されたら逃げ場がありません。火を付けられたら一貫の終わりです。でも、ここならどこにでも逃げることが出来ます。多少の危険は伴いますがね」 「案ずな。俺がこの命に代えても姐さんと子どもたちを守る」 青空さんが落ち着いた、低い調子の声で言うと、警戒の眼差しを外に向けた。

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