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番外編 チカちゃんを襲った犯人

「もう一人の犯人は顔のない男なんですか?」 「いいえ」 橘さんが首を横に降った。 「表の顔は、お年寄りを自宅まで送り迎えする通所ディサービスの運転手で、裏の顔はこころやすらぎの出家信者です。利用者がどのくらい資産を持っているか値踏みし、カモになりそうな利用者を見付けると積極的に話し掛けたり、優しくしたりして仲良くなり、それとなく悩みがないか聞き出し、言葉巧みにこころやすらぎに勧誘し、老後の資金にとコツコツ貯めた預貯金をすべてお布施として巻き上げ奈落の底に突き落とす。人の良さそうな善人面をしたとんでもない悪党です」 「お年寄りの敵よ」 「宋さんは鼻がやたらと利きますからね。ある介護老人ホームに潜入していた時、前に利用していた事業所の職員に怪しげな宗教に勧誘されたと利用者が話していたのを聞いて、犯罪の匂いを嗅ぎ付けたようです」 「連川さんももしかしてその出家信者なんですか?」 「はい、恐らくそうだと思います。二人が頻繁に連絡を取り合っていたのが、宋さんが潜入している運送会社の社長です」 宋さんは危険を承知の上で運送会社に潜入したのだった。

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