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番外編 彼の心配事
「辛いことを思い出させるようで悪いが……」
「卯月、それは俺が聞く」
ふらりと覃さんが戻ってきたのは夜の八時過ぎのことだった。
「急にいなくなるから、譲治がパニックを起こして大変だったんだぞ」
「それはすまなかった。こっちも急ぎだったんだ」
しゃがみこむと譲治さんの顔を覗き込んだ。
「チョコミントのアイス、食べたいって言ったろ?土産だ。悪かったな。急にいなくなって」
譲治さんは顔をぶんぶんと横に振った。
「いい子だ」
頭をぽんぽんと撫でてもらうとたちまちニコニコの笑顔になった。
「時効まであと一年。子供の敵の変態野郎を何としてでも捕まえて、養育費と慰謝料を払わせたい。逃げ得は許さないんだと」
「お前も大変だな」
「これが仕事だからな。しゃあない」
彼と覃さんがそんな話しをしていたら、
「その話し、あとで詳しく聞かせてもらえませんか?」
バスタオルを両手で抱えた橘さんが部屋に入ってきた。
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