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番外編 渋川さんと真山さん
「俺と兄貴はロミオとジュリエットみたいなそんな関係だ。お互いどんなに想いあっても敵対関係にあり、決して結ばれることはない。この非情な運命をどれほど恨んだか」
渋川さんがハンカチで目元をそっと拭った。
「渋川、未知が固まっているぞ。それに嘘泣きは止めろ」
「さすがは俺の兄貴。何でもお見通しだな。はじめまして。宇賀神組の渋川だ。宜しく」
にかっと悪戯っぽい笑みを浮かべながら軽く頭を下げられた。
「卯月遥琉の妻の未知です。宜しくお願いします」
僕も自己紹介し頭を下げた。
「きみは気付いていないと思うが七海を助けに行ったとき何度か擦れ違っている」
「え?そうなんですか?」
まさに寝耳に水で声が裏返ってしまった。
「噂に聞きし兄貴の美人妻をどうしても拝みたくて若い衆に紛れていたんだ。世間話はこのくらいにして、兄貴、要件を伝える」
渋川さんの顔つきも声色もガラリと一変した。
「オヤジからの伝言だ。生き残るために昇龍会の傘下に入りたい。笹原会長との話し合いの場を設けてほしい。兄貴に仲立ちを頼みたい」
「人質が連れ去られたと聞いたが」
「伯父貴は死装束で上京した。いずれ石山らに殺されると覚悟して遺書をオヤジに預けていった。そこには自分に万一のことがあれば本部と袂をわかち、敵の軍門に下れ、探す必要はない、そう書いてあった」
「そうか」
彼が固い表情のまま腕を前で組んだ。
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