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番外編渋川さんと真山さん
渋川と二度、三度呼ばれて、やっと我に返った。
「痴情のもつれから真山に刺された。なんてしゃれにならねぇぞ」
「その真山なんだが……」
「ん?」
「ここじゃああれだから、あとで話す」
「よく分からねぇけど、俺でいいならなんでも相談に乗るぞ。ストレスをため込むと体に悪いからな」
「はい、兄貴!」
渋川さんは大きな声で変事をするときらきらと憧れの眼差しを彼に向けた。
「すっかり話しが脱線したな。渋川、彼女はチカだよ」
「チカ?」
「分からないか?それじゃあ乾千景は?」
「いぬい……ちかげ?」
しばらく考え込んだのに、
「もしかして鼻垂れ小僧で泣き虫でチビだった。あの千景か?兄貴の後ろにいっつも隠れてびくびくしていた。嘘だろう。さては兄貴、俺を驚かせようとしてるな」
「な訳ないだろう。ここにいるのは正真正銘乾千景だ」
渋川さんがチカの顔をチラッと見ると、
「失礼しちゃうわね」
ぷいっとそっぽを向いた。
「まさか女になっているとはこれっぽっちも予想していなかったんだ。すまない」
「謝らなくてもいいわよ。どうせ、アタシは鼻垂れ小僧の泣き虫ですから」
チカちゃんはすっかり臍を曲げてしまった。
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