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番外編 渋川さんと真山さん
「ただの痴話喧嘩にしか見えないんだけど」
「チカもそう思ったか?」
彼がじっとチカちゃんの手を見つめた。
「ほらやっぱりだ。赤くなっている。お茶がかかったんだ。すぐに冷やさないと。痕が残ったら大変だ」
「大丈夫よ。こんなのたいした火傷じゃないわ」
「大丈夫じゃない。いいか、これを国井が見付けたらどうなる?」
「真っ先に理由を聞かれるわよね。あら、やだ~~大変。血の雨が降るじゃないの」
チカちゃんが慌てて洗面所に走っていった。
「冷凍庫に氷嚢があるはずだ。誰か取りにいってくれ」
「俺が行く。消毒液だったら断固拒否だが、氷嚢なら」
柚原さんが台所に急いで行ってくれた。
「オヤジ大変です!」
柚原さんと入れ違いに若い衆が駆け込んできた。
「どうした」
「真山のヤツ、玄関のドアを足で蹴りやがって硝子を割りやがった」
「何食わぬ顔で行こうとしたから、オヤジと会長に謝るように注意した佐治に、うるさいと逆ギレして、掴みかかって取っ組み合いの喧嘩が始まったんです」
「たまたま近くにいた譲治が喧嘩に巻き込まれて、真山に突き飛ばされました」
「たく、よそのシマで好き勝手しやがって。お仕置きが必要だな」
彼が深いため息をついた。
「未知、悪いが救急箱を玄関に持ってきてくれないか。佐治と譲治が怪我をしているかも知れないから」
「紫さんに救急箱がどこにあるか聞いてくるね。紫さんどこにいるかな?」
さっきまで台所にいたからまだいるかもしれない。急いで台所に向かった。
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