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番外編 渋川さんと真山さん

台所を覗くと紫さんと橘さんがスナップエンドウのヘタと筋を取りながら、和やかなムードで世間話に花を咲かせていた。 「紫さん、すみませんが救急箱をお借りしてもいいですか?」 「チカさんだけでなく、たいくんとここちゃんまで火傷をしたの?」 「いえ違います。玄関の引き戸のガラスが割れたみたいで」 「譲治、また割ったの?」 「また?」 「上ばかり見て、前をよく見てなくてね、玄関の引き戸に激突してガラスを割ったのよ。二日前に交換したばかりなの」 「そんなことがあったんですか?」 「えぇ。こればかりはね頭ごなしにがみがみ怒っても仕方ないからね。仏の顔も三度までという言葉を教えてあげたのよ」 「割ったのは譲治さんじゃなくて、宇賀神組の真山さんというひとです。若頭補佐の渋川さんと喧嘩して……」 事情を手短に説明すると、紫さんと橘さんの眉間にどんどん皺が寄っていった。 「未知さん、私が行きます」 「あ、でも……」 「あとは、お願いしますね」 にっこりと微笑むと紫さんは救急箱を手に玄関に向かった。 「菱沼組には菱沼組のしきたりがあります。それを守って頂かないと。好き勝手を許したら笑い者にされますからね」 橘さんが険しい表情を浮かべた。

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