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番外編 まさかまさかの……

真山さんに突き飛ばされ尻餅をついた譲治さん。手をついた場所にガラスが飛び散っていたみたいで、それで怪我をしたみたいだった。譲治さんは匂いに敏感だ。柚原さんと同じで消毒液特有の匂いがやはり駄目だった。 「上澤先生、忙しいのにすみません」 「病院は嫌だって駄々こねて暴れてるって聞いて、来るのを待っていたら日が暮れっちまうべ。たまたま患者がいなくて早じまいしたところだからいいんだ。患者は?」 「こちらです」 台所の隣にある二畳ほどの物置として使っている部屋に案内した。 「あとは任せてくれ」 「お願いします」 「あ、そうだ。すっかり忘れるところだった。チカさんにお客さんが来てるぞ」 「お客さん?誰だろう?」 チカちゃんがまだここにいることを知っている人と言えば……国井さん?いや、そんなまさか。さっき電話で話したばかりだし。 それとも宇賀神組の若頭さんかな? 首を傾げながらチカちゃんが子どもたちと遊んでいる部屋へ向かった。考え事をしていてろくすっぽ前を見ていなかったら、誰かとぶつかった。 「ご、ごめ……」 顔をあげようとしたとき立ちくらみがして、体が大きくふらついた。 「おっと、危ない。やっと治ったのにまた手を捻挫をしても知らないぞ」 声は覃さんでも宋さんでもなかった。東京にいるはずの、まさか、まさかのひとだった。

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