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番外編 そらさんれんしゅうノート

「国井と渋川か?互いに見詰めあっていた。見てて暑苦しい」 「青空、なんか日本語違くないか?」 「そうか?」 青空さんが秦さんに、一太が大きく【そらさんれんしゅうのーと】と平仮名で書いたノートをニコニコ笑いながら渡した。 「一太の漢字をだいたいマスターしたぞ」 「そうか。頑張ったな」 「先生がいいからな」 秦さんが目頭をそっと押さえた。 「なんで泣く」 「我が子の成長ほど嬉しいものはない」 「漢字がなかなか難しい。でも、書けるようにならないと、日本人なのに日本人じゃないだろう」 「そうだな。次は奏音の漢字をマスターするように頑張ろうな。この父という字、とても上手になったな。バランスがいい」 「なんでハチの字はあんなに難しいんだ。喧嘩を売っているとしか思えないぞ」 「そうだな」 秦さんがクスクスと笑った。 「あ、そうだ。国井が渋川に器物損害は大目に見るとして、暴行罪の現行犯で逮捕する、そんなことを言ってたぞ」 「のんびりしている場合じゃないな。仲裁しに行くとするか?」 青空さんが秦さんに背中を向けしゃがんだ。 「おんぶしてくれるのはすごく嬉しいんだが……その気持ちだけありがたく受け取っておく」 「遠慮するな」 「遠慮していない」 「遠慮しているだろう」 押し問答をしたのち秦さんが折れた。青空さんは秦さんをおんぶすると、鼻唄を口ずさみながら上機嫌で国井さんのところに向かった。

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