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番外編思わぬ逆襲

「嘘をつきたくないので正直に言います。未知さんをお姫様抱っこするのが長年の夢でした。卯月に阻まれ、弓削に阻まれ、青空に阻まれ、未知さんに近付くことすら出来なくて、何度地団駄を踏んだことか」 「あの、森崎さん。久弥さん……」 くちょん。へっ、くちょん。連続でくしゃみが出た。 「もし久弥が見ていても、未知さんには焼きもちを妬かない。姐さんラブのあんちゃんに怒られるし、あんちゃんよりもおっかないファンクラブの連中を敵に回すことなるからな」 森崎さんとそんな会話をしているうちにあっという間に洗面所に到着した。 「火急の用じゃなかったら、未知さんを抱っこしたまま、嬉しくて家のなかを五周くらい回っていたかもしれない。夢のようなひとときを過ごせた。抱っこをさせてくれてありがとう」 森崎さんが愉しげに笑いながら床の上にそっと下ろしてくれた。 「僕の方こそありがとうございます」 「このくらいお安いご用だ。礼はいいから、早く手を洗った方がいい」 洗面所を出ていくとき何かを思い出しみたいで森崎さんが一旦立ち止まった。 「洗濯機の上にメモ帳を置いておく。宇賀神組の三人の問題児の取り扱い方法について、端的にまとめた。あと、組長の宇賀神についても簡単に書いておいた。手が空いたときにでも目を通しておくといい。いざというときにきっと役に立つから」

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