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番外編譲治さんの悲しい過去

「イチの父親は酒さえ呑まなければ口数の少ない大人しい男なんだがな、酒が入るとまったくの別人になる。信じられないかも知れないが、譲治が自閉症だと分かるとイチの父親は、うちの家系に譲治みたいな子供はいない。息子以外の男と浮気して出来た子供だろう。この尻軽女。恥さらしと、みなの前で嫁を侮辱し、ことあるごとに辛く当たるようになった。達治が産まれてからは、達治しか可愛がらず、譲治は押し入れのなかに閉じ込められるか、柱に縛られるか、叩かれるか。その三つのうちのどれかだった。イチは両親に一泊の旅行をプレゼントし、両親が留守の隙に内緒で嫁と子どもたちを連れて実家を出ることに決めた。決行日は三月三日。仕事を終えて大急ぎで帰宅したイチは愕然とした。待っているはずの嫁と子どもたちの姿がなく、代わりに残高ゼロの通帳と離婚届と結婚指輪が置かれてあったんだからそりゃあそうなる」 「だから譲治さんは三の数に妙にこだわるんだね。子どもが九人いればみんな違うもの。あんよ出来たのが遅くても、三歳の誕生日を過ぎてもあーとかうーとかしか言えなくても、それがその子の個性だもの。温かく見守ってあげなきゃ。子どもは親の所有物じゃないもの。思い通りには育たないよ」 紗智さんと那和さんといないいないばぁーをして遊ぶ太惺と心望に目を向けた。 ※うちの家系に~~は 実際私自身親に言われ、甥も祖父母に言われ、息子も主人の両親に言われました。

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