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番外編 母の温もり
「もしかして拭いて欲しいの?」
頬をほんのり赤くしてこくりと頷く譲治さん。
「姐さん、甘やかしたら譲治のためにならない」
「それはそうなんだけど……」
チラッと見ると、今にも泣きそうな顔をしていた。その表情が彼と重なって見えた。
「橘にめっ、オヤジにあっぷ、怒られる。誰が二人の頭に生えた角を撫で撫ですると思う?俺とハチと柚原だ」
青空さんが譲治さんの代わりにタオルを受け取ると、手に無理矢理握らせた。
「自分でやるんだ」
「青空さんだってハチさんに拭いてもらってるのに。なんで俺は駄目なんだ?」
「オヤジに半殺しにされてもいいなら止めない」
「二人とも喧嘩しないで。譲治さん、今日だけだよ。約束出来る?」
「出来る」
「椅子から落っこちて尻餅をついたら大変だからちゃんとお尻ぺったんして。足は片方ずつ上げて」
「分かった」
足を拭きはじめたら、指を触られるのがくすぐったいみたいで、身を捩りながら悶絶していた。
「暴れると危ないよ。すぐ終わるから。え?ちょっと待って譲治さん!」
譲治さんが突然抱き付いて来たものだからバランスを崩して後ろに倒れそうになった。
「姐さん」
背中がタイルにぶつかる寸前に青空さんが手で支えてくれたから事なきを得た。
「ありがとう青空さん」
「こら、譲治!さっさと姐さんから離れろ!」
青空さんが引き離そうとしたら、譲治さんは僕に抱き付いたまますやすやと眠っていた。
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