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番外編 彼の験担ぎ

彼がいなくなったとたん、陽葵が火のついたようにギャンギャン泣き出した。あやしていると、 「ひまちゃん、今いくよ」 柚原さんが速攻ですっ飛んできてくれた。 「寝かし付けは任せろ。姐さん、これをオヤジに」 子どもたちが折り紙で折った色とりどりの蛙を渡された。 「験担ぎだ。ちゃんと帰ってくるように渡してきたらどうだ」 「ありがとう柚原さん。陽葵をお願いします」 「おぅ、任せておけ」 柚原さんに抱っこしてもらうなりギャン泣きしていた陽葵がぴたりと泣き止んだ。 「ひまちゃん、ぱぱたんだって分かったのか、そうか。偉いな」 にこっと微笑む陽葵に柚原さんの目尻は下がりっぱなしになり、デレデレになってしまった。 「早く行かないと間に合わないぞ」 「あ、そうだった」柚原さんに急かされ、大急いで彼のあとを追い掛けた。 「遥琉さん、待って」 「どうした未知?そんなに急いで」 「これを渡したくて」 彼はちょうど靴を履き替えていた。折り紙で折った蛙を差し出すと、 「ありがとう」 彼が笑顔で受け取ってくれた。 「ちゃんと帰ってきてね。僕のとなり、遥琉さんの寝る場所を空けて待ってるから」 彼が驚いたように目を見開くと、 「未知からそう言ってもらえるなんて思わなかったから。蛙の折り紙ももちろん嬉しいが、俺の験担ぎは……」 そう言うと指で前髪を左右に分けると、おでこにちゅっとキスをされた。

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