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番外編 キスの催促
ほっぺを指でつんつんして、行ってきますのキスをしてくれと催促された。
「えぇ~~ここで?」
若い衆の皆さんが見てるのに。
「今さら恥ずかしがってどうする」
「だって恥ずかしいのは恥ずかしいんだもの」
「時間がない。早く」
「早くって言われても……」
ちらっと若い衆を見た。
「お前ら全員外に出ろ」
彼が一声掛けると若い衆があっという間にいなくなった。
「これで不服はあるまい」
こくりと頷いて、背伸びし爪先立ちになると、彼が腰を少しだけ屈めてくれた。
「いいよって言うまで目を閉じててよ」
「分かったよ」
「本当に分かってる?」
「分かってるよ」
クスクスと笑いながら彼が目を閉じた。
若い衆を待たせる訳にもいかないから、覚悟を決め、彼の頬っぺにキスをしようとしたら、彼がいきなり顔の向きを変えたものだから、頬っぺじゃなく、唇にキスをしてしまった。
慌てて唇を離そうとしたら、彼の腕が腰に回ってきて強く抱き締められ、深く情熱的
な口づけをされた。
「未知、行ってくるよ」
彼の唇が名残惜しそうに離れていった。
とろんと潤んだ瞳で見つめると、彼が満足そうな表情でにこっと優しく微笑んでくれた。
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