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番外編 朝からドキドキの連続
袋のなかに入っていたのは煙管だった。
「これは仕込み刀と呼ばれるヤツだ。実際は刀とは分からないように偽装されたものだ」
「さすが詳しいな」
「警戒心が強かった九鬼は暗殺を恐れ、仕込み杖をわざわざ作らせて常に持ち歩いていたからな。オヤジ、これは?」
「昨夜警備にあたっていた若いのがポストの前に立つ不審な男に気付き声を掛けたら慌てて逃げたそうだ。ポストの中を確認するとこれが入っていたそうだ。どっかでこれと似たような煙管を見たことがあるんだが、肝心なことがどうしても思い出せないんだ」
「先々代がお守り代わりに持っていた。女に何度も寝首を取られそうになったからな」
「形見分けとして誉が譲り受けたとなると辻褄が合うな。柚原、ありがとう。助かった」
襖を閉めようとした彼。
「あ、そうだ。すっかり言い忘れていた。これから三十分間、未知とイチャつく予定だから邪魔すんなよ。物音を立てるなよ。未知が子どもたちが気になって集中出来ない。いいか、分かったか?」
「はい、かしこまりました」
柚原さんがびくっと背を震わせ姿勢をただした。
「分かればいい」
念を押すと静かに襖を閉めて、足音を立てないように抜き足差し足で戻ってくると、布団の中にごそごそと潜り込んできた。
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