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番外編 天知る地知る我知る人知る 悪事千里を走る
「天知る地知る我知る人知る。悪事千里を走る。だったんだ」
「どうしたのマー?」
「いきなり言うからビックリしたよ」
「ごめんね。二人とも。あのね、いつみさんが組事務所に来て帰り際何かを呟いたの。呪文みたいな言葉のあと、お姉ちゃんの名前をなんで言ってるのって不思議に思ったんだけど、毎日子どもたちの世話でバタバタしているから、すっかり忘れていたんだけど、そうだ。思い出した。天知る地知る我知る人知る。悪事千里を走るって言ってたんだ。エレベーターの前に飾ってあった植木鉢の花を手に取り、しばらく眺めてから帰っていったの」
「橘どういう意味?」
「分かりやすく言えば、悪事や不正は必ず発覚する。悪い行いは悪い話はたちまち世間に知れ渡る。そう意味です」
「橘さん、例えばの話しなんですが……」
「私も未知さんと同じことを考えていました。エレベーター前にあるのは観葉植物です。一度も動かしていないはずです。鞠家さんに電話を掛けてみます」
「俺が掛けたい」
紗智さんが右手を挙げた。
「繋がったら返す」
「じゃあ、お願いします」
橘さんが紗智さんにスマホを渡した。
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