2458 / 3576
番外編 いちさん、なかないで
「卯月はエキゾチックな美人がタイプなのか?」
「は?」
「そう睨むな。熱い眼差しで見てるからそう思っただけだ」
「覃、そんなに半殺しにされたいのか?」
「いや、まだ、されたくないな」
「なら黙ってろ。お口チャックだ」
「お~~こわ。てっきり図星かと思ったぞ」
「あ?喧嘩を売ってるとか思えないな。もういっぺん言ってみろ」
戦闘態勢に入るかのように、肩や首を回し、指の関節をぽきぽき鳴らす彼。
まさに一触即発。万事休す。と思ったら、
「けんかはだめっ」
遥香が二人の間に入った。
「のんのさまのまえだよ。たんさん、おててをこうして。ちゃんとなむなむしなきゃだめっ。たってなむなむしない」
それは遥香や子どもたちがいつも彼に言われている言葉だった。正座して、背筋をぴんと伸ばし、手を合わせてのんのさまに拝むんだよ。遥香が実際にやってみて覃さんに教えると、
「へぇ~~なかなか奥深いな」
覃さんは言われた通り素直に正座すると、見よう見まねで手を合わせた。
「遥香ちゃんは物怖じせず、肝が座ってる。たいしたもんだ」
「俺と未知の自慢の娘だからな」
彼がゆっくり微笑んだ。
ともだちにシェアしよう!