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番外編 覃さん、柚原さんを怒らせる
「ジョーはなぜに帰ってこない」
覃さんはソファーに深く座り、長い脚を組みイライラしていた。
「病院が混んでいるだと思います」
「ジョーは待つのが苦手だ。病院で駄々をしていないか、心配だ。未知、どこの病院だ?迎えに行ってくる」
「橘さんと鍋山さんが一緒なのできっと大丈夫です。覃さんはここで待っててください」
立ち上がろうとした覃さんを慌てて止めた。
「未知は知ってるんだろう?なんで教えてくれないんだ?」
その言葉にギクッとした。
恥ずかしいから覃さんにはこのことを教えないでほしい。譲治さんと約束したんだもの。
その直後。
気のせいかも知れないけど。お尻を触られたような、そんな気がした。
「た、覃さんっ」
顔を真っ赤にして睨み付けると、
「減るもんじゃないし、そう怒るな。なかなかいい触り心地だ。未知は、表情がくるくると変わって面白い」
悪びれる様子もなく、ニヤリと愉しげに笑われた。そのとき覃さんの頭に向かって丸いものが飛んできた。
それは見事に命中した。
「いてっ!誰だ!」
頭を押さえながら覃さんが辺りをキョロキョロと見回すと、指をぽきぽきと鳴らしながらエプロン姿の柚原さんが目をつり上げ仁王立ちしていた。
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