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のぞみさん、もっと生きたかったと思う

部屋に戻り子どもたちが蹴飛ばした毛布を両手で抱え再び仏間に向かった。 譲治さんを起こさないように毛布を肩にそっと掛けた。そのとき、びくっと譲治さんの体が震えて。慌てて手を引っ込めた。 起こしちゃったかな。ドキドキしながらそっと顔を見ると、目は閉じたままで、もごもごと口を動かしていた。 「え?何?のぞみさん?ここにちゃんといますよ。大好きなお兄ちゃんに抱っこしてもらってすごく喜んでいますよ」 涙が一筋、頬を伝った。 やだ、なんで泣いているんだろう。 今度こそ間違いなく譲治さんを起こしてしまう。鼻を啜りながら、慌てて仏間から出た。 「おっと危ない」 ぶつかりそうになり、彼の逞しい腕のなかにすっぽりと抱き寄せられた。 「目が覚めたら隣に未知がいなくて、すごく心配したぞ」 「ごめんなさい。譲治さんが風邪をひくと思ってそれで毛布を持っていったの」 「そうか。で、なんで泣いているんだ?」 「えっと、それは、その……」 迷ったけど正直に言うことにした。 「のぞみさん、本当は生きてお兄ちゃんのところに帰って来たかったと思う。壱東さんと仲直りしたかったと思う。それが出来ないから、だから、悔しくて」 「俺も未知と同じで、悔しいよ」 腕に力がこもり、ぎゅっと抱き締められた。

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