2467 / 3577
番外編 のぞみさん、もっと生きたかったと思う
「失踪した譲治の母親の手がかりはまだ掴めないのか?」
「はい。達治に家族で撮影した写真を送って寄越せと言ってるのですが、忙しいのか、なかなか送って来ないんです」
彼と柚原さんがのぞみさんの遺影の前でそんな話しをしていた。白い布に包まれた骨壺の前には、たくさんのお菓子とペットボトルの飲み物が供えられてあった。
「未知、どうした?気になることでもあるのか?」
「昨日からずっと思っていたんだけど、のぞみさん、誰かに似てるような……そんな気がしてならないの」
遺影をじっと見つめた。
「あやみ……さん?遥琉さん、そうだよ。あやみさんに似ているんだ。目のあたりなんかそっくりだよ。意志の強そうな太くて直線的な眉は、九鬼さんにそっくりだよ」
「は?九鬼だと?」
彼が目の色を変えた。
「譲治さん言ってた。自分は新しいお父さんより壱東さんのほうが良かったって。自分は壱東さんのところに残りたかったって」
「九鬼は色狂いだ。あり得ない話しでもない」
「いつみさんはどんなに九鬼さんを愛しても子どもには恵まれなかった。愛した男の子どもを産んだまゆこさんや千夏さんを憎んでいたように、譲治さんのお母さんのこともずっと憎んでいたとしたら?復讐するために誉さんたちにのぞみさんを襲わせた。それなら辻妻が合わない?」
ともだちにシェアしよう!