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番外編 のぞみさん、もっと生きたかったと思う
ー未知も同じことに気付いたのね。さすがはアタシの妹。まさに以心伝心ねー
「千里お姉ちゃん、こんなことってあるんですか?同じ人間なのに、なんでこんな酷いことが出来るんですか?」
ー九鬼の女ほど怖い女はいないわ。絶対に敵に回しちゃいけない。火葬前にのぞみのDNAを採取し、睦の同意を得て、血縁関係があるか鑑定中よ。ついでに達治のDNAも採取して鑑定をしてるわー
「え?達治さん?」
ー母親がね、酒に酔っ払ったとき、達治は壱東の息子じゃないって、そんなことをぽろっと漏らしたみたい。達治ね、本当は壱東と譲治がいる福島に残りたかったみたいよ。でも、自分は不義の子。実の親子である二人の邪魔をしちゃいけないと、自ら線引きしちゃったみたいよー
「そんな……」
ー千里《ちさと》、俺も未知と話しがしたいー
蒼生お兄ちゃんの声が聞こえてきた。
ーちょっと待って。今、いいところなんだからー
ーー独り占めするなんて。千里《ちさと》ばっかずるいぞー
ーやだ、どこ触ってんのよ。くすぐったいわよー
普段は千里《せんり》って呼んでいる蒼生お兄ちゃん。
千里《ちさと》って呼ぶのは二人きりの時だけ。ということは……。
「ごめんなさい。せっかくの夫婦水入らずだったのに邪魔して」
慌てて電話を切ろうとしたら、彼の手がすっと伸びてきた。
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