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番外編 よわいものいじめ
「おぃ、卯月!さっきはよくもこの俺に恥をかかせやがったな」
若井さんが鬼のような形相で追い掛けてきた。
彼も龍成さんも立ち止まることなく歩き続けた。
「無視とはいい度胸だな」
若井さんにじろじろと見られた。
会うのはじめてだけど、若井さんは僕のことを知っていた。
何気に目が合うと、にたっと薄笑いを浮かべた。
「ヤクザの親分はいいよな。ろくに働きもせず、贅沢三昧、毎日遊んで暮らしていられるんだ。いいご身分だよな。聞いた話しだと、一回りも年の離れた若い女房との間にガキが九人だと?暇だもんな。やることがないから、クスリを打って、朝からせっせとガキ作りに励んでいるんだろう?」
彼も龍成さんも若井さんの挑発には乗らなかった。
(子どもの前でする話しじゃないだろう)
(場所をわきまえろ)
本当はそう言いたかったのだと思う。下手に出たらつけあがらせるだけ。と、ぐっと堪えた。
「おまわりさんは、おじさんたちの何を知っているんですか?みちさんの何を知っているんですか?何も知らないくせに。そういうの、よわいものいじめって言うんじゃないですか?おじさんたちをバカにしてたのしいですか?よわいものいじめしてたのしいですか?」
めぐみちゃんが一歩前に出て若井さんを睨み付けた。
「めぐみちゃんの言う通りだよ」
「おじちゃん本当におまわりさんなの?」
運動着姿の児童が次から次に集まってきた。
「うるせぇ」
吐き捨てると逃げるように校庭に戻っていった。
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